令和5年度

 

下伊那教育会会長 高山和夫(高陵中)

令和5年度下伊那教育会の会長を務めることになりました、高陵中学校の高山和夫です。

さて、下伊那教育会は明治12年に発足し、今年で144年。この間、特に交通が不便で山間地小規模校の多い下伊那地域において、先生方が、お互いに教育実践を磨きながら教育の質を高めることに貢献してきました。

また、公益社団法人となってからは今年度で11年目を迎えるわけですが、郡音・郡展の開催や、教科等調査研究部、郷土調査部、専門部の各委員会による成果の発表などを通して、飯田下伊那の教育レベルや文化の向上に大きな役割を担ってきました。

ところで、下伊那の誇る偉大な教育者である故毛涯章平先生の記されたお話の中に、ノートルダム大寺院を作っていた3人の職人の昔話がありますが、ご存じでしょうか?

一人目は石を刻む職人。「朝から晩まで石を刻むなんて、家族を養わなければならないから仕方なくやっているが、ばかばかしくてたまらない。」と不平たらたら。二人目は木を刻む大工。同じように「こんなばからしい仕事があるものか」、と不平だらけ。

ところが、一番の下働きである石や木材の運搬の仕事をしている三人目は、嬉しそうに鼻歌交じりに仕事に励んでいました。先ほどの石工と大工が、「そんなつまらない仕事をなぜそんなに楽しそうにやれるのか」と訪ねてみると、彼は二人に向き直り、「なんだって!つまらない仕事だって?俺はノートルダム大寺院を作っているんだぞ。ちっともつまらないなんてことはない」と胸を張って答えたというのです。

歴史に名を遺す大聖堂をつくるという大事業に関わることができ、そこに命を懸ける気概こそ、「一流たるを目指す心意気」と毛涯先生は締めくくられています。

私たちは、子どもたちを育てることで地域や世界の未来を創っています。これは、ノートルダム大寺院を作ることよりも大きな仕事です。

目の前の子どもたちが、未来を創っていくのです。そう考えるとワクワクしませんか?近い将来、リニアも来ますよ。このリニア時代をどう生きてゆくのか、地域を大事に思い、知恵のあるたくましい子どもたちと地域を育てなくてはなりません。

そして、教育会の事業も、そんな子どもたちや地域を育てるために、先生たちに上質な研修を保障する大事な仕事であり、更に、地域の文化レベルや教育力を引き上げる重要な役割を果たしています。これも、ノートルダム大寺院を作ること以上に大きな仕事です。

そうは言っても、私は、教育会は、先生たちにとって本当に役に立つものでなければならないと考えています。先生たちが、強いられなくとも「会員となってともに学びたい」、「下伊那地域の教育や文化の振興のために役立ちたい」と思えるような教育会でなくてはならないと思います。

およそ三年間、コロナに苦しめられました。しかし、その中で先輩たちのお導きにより、教育会の事業もさまざまに工夫していただきました。

例えば、昨年度は、自主的に手を挙げた委員会がそれぞれの会場で発表を行った「教科等研究まとめの会」をはじめ、むとすプラザを使用してのコンパクトな郡展、オンラインやオンデマンドを活用した様々な研修や発表会など、多くの工夫を取り入れていただき、どれもみな好評でした。

そんな、コロナ禍の中で工夫してきた昨年度までの取り組みを生かしつつ、公益社団法人としての下伊那教育会の使命も果たせるように、さらなる変革を進めて参りたいと思います。

今、世の中は、コロナ禍、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や北朝鮮のミサイル発射実験、スーダンの人道危機などの世界的な緊張感、地震や気候変動による未曽有の自然災害等、先の見えない不安にあふれています。

しかし、10年後、20年後、今私たちが育んでいる子どもたちが大人となった時、平和でみんなが明るい希望を持てる世の中であってほしいと思います。

下伊那教育会員の皆様にお願いがあります。「人の役に立つ大人になって、平和でみんなが明るい希望を持てる世の中をつくりたい」そんなふうに願う子どもたちを育てましょう。そんなふうに考える地域を育てましょう。そんな思いを語り合える仲間を、教育会を通して創りましょう。

会員みんなの手で、「一流たるを目指す心意気」をもとに、ともに「いい教育会」をつくりましょう。

そのためにどうか皆様のお力をお貸しください。声をお届けください。

それではこの一年間、よろしくお願いいたします。